ツィス

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

「サウンドクリエイターのためのエフェクター製作講座」の筆者である大塚明さんがオススメしていたので読んでみました。
東京近郊で謎の”ツィス音(C♯)”が発生。
だんだんと強まっていくツィス音によって人々の生活が壊されていくというパニック?小説。
カタストロフィは無かったけど、ラストのどんでん返しが良かった。
ツィス音のアッと驚く正体!
粛々と人々が音から避難していく様は、なんだか日本的かもしれないと思った。
がしかし、ちょっと不満も。
書かれたのが1971年。
これはいわゆる理系ミステリの走りなのではないかと思う。
ただ、先日エントリに書いた「科学的とはどういう意味か」の”科学的”の定義からすると、「再現性のある現象を数式を用いて表現し、みんなで築き上げていく」というプロセスが無いのでちょっとモヤモヤした。
聴覚を奪われた社会のシミュレートが相当リアルで、一読の価値アリ。
音に襲われた人々の心理描写に克目せよ!

少女には向かない職業&電波女と青春男

 

少女には向かない職業 (創元推理文庫)
GOTHICシリーズの桜庭一樹のジュブナイル小説。
ヒロインは中学二年生13歳。
正にジュブナイル。
13歳が2人殺す。

電波女と青春男(1) (電撃文庫)
入間人間のジュブナイル小説。
ヒロインは、腰から上を布団でぐるぐる巻きにしていて、自称宇宙人で、地球は狙われているらしいと言う何とも電波的な女(しかも引きこもりNEET)。
青春を謳歌しようと都会に出てきた主人公とはある意味相反する存在なわけですが、

神秘とは希望であるべきだった。まだ暴かれていない深海の領域に思いを馳せて俺が年甲斐も無くはしゃぎ、未知の生物を夢想するように。前へ前へと、押しやってくれる存在であるべきだった。ニンゲンだろうと、スカイフィッシュだろうと、グレイだろうと。

といって社会復帰に協力し始めます。

地の文が主人公のつぶやきになっていて非っ常に読みづらいのですが、上に引用した一文をもってしてなかなか大した小説だと思います。
でも正直アニメ観ていなかったら読む気にもならなかったかも、とは思う。


と、今年最後の更新になりました。
来年も奇妙なスタラクタイトをよろしくお願いします。

ジグβ(ベータ)は神ですか

ジグβは神ですか (講談社ノベルス)

今月の新刊、森博嗣最新刊。
タイトル通り、Gシリーズの8作目です。

あらすじ
前作「目薬α」から4年後。
芸術家が集う自給自足の村で、ラッピングフィルムに包まれた死体が発見される。

推理には毎度のごとく唸らされまが、例によってなんともスッキリしない感じ。
でも文調と叙述に独特の感じあってがイイ感ですね。

本作は西之園萌絵や瀬在丸紅子、Xシリーズの椙田秦男といった、「すべてがFになる」から始まる一連のシリーズのオールスター登場といった感じになっています。
その中で、ぜんぜん覚えていないフラグがいくつか回収されたみたいで、ちょっと悔しい。
「すべてがFになる」を読んでから8年ぐらい経っているので、そろそろ見返してもいいかな、という気がしてきました。

アルジャーノンに花束を


アルジャーノンに花束を (Amazon)

・あらすじ
精神遅滞の青年チャーリーは脳手術を受け、天才に生まれ変わる。
高い知能を獲得し、学ぶ喜び、知識を統合して新しい知識を生む喜びを知る。
一方で手術前は気付かなかった自分への侮蔑、他者との軋轢に苦しむ。
そんなある日、チャーリーと同じ脳手術を受けたネズミのアルジャーノンに異変が起こる。

・感想
知的障碍者と社会の関わり云々みたいな堅苦しい内容をイメージしていたので、ずっと敬遠していたんだが実際そんな事はなかった。
何というか健常者と障碍者が云々という話を抜きにして、人間という祖体の奥底にある得体の知れない大きな物を描こうとしているんじゃないかと思った。
深読みしすぎ、と言われるかもしれないけど、チャーリーという一人物の中になんかそういうのがあるんじゃないかと感じた。

まぁ、あと何回か読まないといけないな;

暗黒神話大系 クトゥルー(8)

暗黒神話大系 クトゥルー〈8〉(Amazon)

生みの親たるラヴクラフトを含む、多くの作家達の手で織り成される”クトゥルフ神話”。
今までラヴクラフト全集を読んできましたが、他の作家の作品も読んでみたいな、
というのと、”忌まわしき双子”、ロイガーとツァールが登場する「潜伏するもの」が読みたくて、暗黒神話大系 クトゥルーの第八巻から読み始めました。
収録作品は以下の通り。

屋根裏部屋の影   byラヴクラフト&ダーレス
侵入者   byヘンリー・カットナー
屋根の上に   byロバート・E・ハワード
電気処刑器   byアドルフェ・デ・カストロ
潜伏するもの   byダーレス&スコラー
名もなき末裔   byクラーク・アシュトン・スミス
インスマウスを覆う影   byH・P・ラヴクラフト

「インスマウス」はラヴクラフト全集第一巻に掲載されていたので省略。
なのですが、正直ラブクラフト作品に比べると、どれも微妙。
「潜伏するもの」も、あらすじ追ってるだけのような書き味で。
ちょっと物足りない。

読みにくい読みにくいと言っていた、あの這いずり回る冒涜的で名状し難い形容詞軍が実は作品に欠かせないエッセンスだったんだなぁ。

関連
ラヴクラフト全集 (3) (H・P・ラヴクラフト 2011/5/15)
ラヴクラフト全集 (4) (H.P.ラヴクラフト 2012/05/17)
ラヴクラフト全集 (5) (H.P.ラヴクラフト 2012/06/07)
這いよれ!ニャル子さん (7) (逢空 万太 2011/10/30)
這いよれ!ニャル子さん (8) (逢空万太 2012/1/15)
這いよれ!ニャル子さん (9) (逢空 万太 2012/05/15)