ツィス

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

「サウンドクリエイターのためのエフェクター製作講座」の筆者である大塚明さんがオススメしていたので読んでみました。
東京近郊で謎の”ツィス音(C♯)”が発生。
だんだんと強まっていくツィス音によって人々の生活が壊されていくというパニック?小説。
カタストロフィは無かったけど、ラストのどんでん返しが良かった。
ツィス音のアッと驚く正体!
粛々と人々が音から避難していく様は、なんだか日本的かもしれないと思った。
がしかし、ちょっと不満も。
書かれたのが1971年。
これはいわゆる理系ミステリの走りなのではないかと思う。
ただ、先日エントリに書いた「科学的とはどういう意味か」の”科学的”の定義からすると、「再現性のある現象を数式を用いて表現し、みんなで築き上げていく」というプロセスが無いのでちょっとモヤモヤした。
聴覚を奪われた社会のシミュレートが相当リアルで、一読の価値アリ。
音に襲われた人々の心理描写に克目せよ!

科学的とはどういう意味か

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

「すべてがFになる」等のいわゆる理系ミステリで有名な森博嗣のエッセイ。

科学万能の時代である現代において科学を忌避し、「科学的な」話に耳を借そうとせずにひたすら単純化された情報を求める輩がいる。
こういった思考停止状態はどこからくるのか、そもそも「科学的」とはどういう概念なのかを説明する一冊。

科学に対する嫌悪というより”自分にはどうせわからない”というあきらめは、そもそもが思考停止から来ているので、自己の意識改革でなんとかするしかないんだけど、そういう態度がまかり通るのには、集団の空気を読んで周囲と同調したいという心理が働いている面があるという。
周りに合わせて自分の感情を殺していると、だんだんと自分で考える事をしなくなるというわけだ。
「科学的」ということを一言で言うと「みんなで築きあげていく」という事だそうだ。
みんなで公平に情報を吟味していくには、意味のブレの少ない数式を使う事になるのは当たり前。
世界の英知を集めて、皆が納得いく結論を得られるまで確定を避けるという意外と謙虚な業界だったみたいです。
昨年7月頃、「ヒッグス粒子発見か?」と言う報道がなされ、量子論の話題で盛り上がりましたが、結局発見された粒子がヒッグス粒子なのかはどうかは、今も情報を収集しているんだそうです。
実に慎重です。
最近では津波の高さ規定云々や放射線量の規制云々といった命に関わる”数字”の話が多く出ています。
数字の意味や定義を理解して、与えられた情報から最適解をはじき出すことの積み重ねが、大きな危険を回避する鍵になるんだそうです(実際命に関わるのか否かも含めて)。

手帳カスタマイズ術

手帳カスタマイズ術 最強の「マイ手帳」を作る58のヒント

システム手帳から「ほぼ日手帳」、自分も使っている「超整理手帳」まで、あらゆる手帳のあらゆる使い方アイデアが網羅された一冊。
よくぞここまで集めた!というか、普段自分が使っていない手帳のネタまで纏め上げたのはいくらなんでもスゴイと思う。
自分は 超整理手帳 を使用していて、活用法を調べまわっていた時期があったんですが、その時思ったのが、
このテの手帳カスタマイズ云々の情報は既に出尽くしたかなぁという感。
ちょっと何様!で申し訳ないんですが。
後は、いかにして既にあるテクニックを自分なりに改造して自分の手帳にインストールするのかが問題かと思います。
既に知っているテクニックで、今はあんまり使えないかなぁ、と思っていても、後々イイと思えてくるアイデアがあるので、つねに問題意識をもって改善を続けるのが大事なんじゃないでしょうか。
もちろん、手帳をカスタマイズするのは、何かしら達成したい目標があってのことなので、手帳のカスタマイズ自体を目的にしてはいけないですよね。
そこらへんは注意がいるかもしれません。
この手の本は定期的に読み直すといいんじゃないでしょうか。

超簡単 お金の運用術

超簡単 お金の運用術 (朝日新書)

世の中には色々な金融商品があって、儲かったり儲からなかったりしているらしいです。
本書はそういった群雄割拠というより跳梁跋扈とした金融界で、割と手間をかけずになるべく多く投資利回りを得られるやりかたを紹介しています。
ざっくり書くと、貯金をETFという投資信託の一種に投資して、事故とか病気とかで大金が必要になったら部分的に解約してお金を作って運用する方法。
もちろんもっと細かくHow-Toがありますが。
ETFとは「証券取引所で取引される投資信託」のことだそうで、あんまり儲からない代わりに割りと安定しているんだとか。
つまりローリスクローリターンなんでしょうか。
自分の乏しい経済知識ではETFの安全性が評価しきれなかったので手を出さないことにはしましたが、本書後半の「お金のあれこれ簡単レクチャー」は参考になりました。
「自分自身の財産を管理している銀行を相手に投資の話をしてはいけない」というのは良く考えると当たり前ですが、言われて初めて気がつきました。
自分の財布の中身を見せながら値段の交渉をするようなもんですよね。
それと、昨今の貯蓄が金利でほっとんど増えない時代に数%の手数料や金利を支払うのがいかにマズイ事なのか。
いかに借金をしてはいけないか という事もよくわかりました。
割の良い運用方法を知りたい、というより、この本をきっかけに実用的な経済のアレコレを学び始めるのに良いかもしれません。

知的生産の技術


知的生産の技術 (岩波新書)

ノート術やメモ術の本を読むと、高確率で名前が挙がるライフハック本の古典。
”知的生産の技術”という事で、ネタ集めから、資料の整理法、考えた事を文章で発表する所までのテクニックを紹介しています。

本書がススメるノート術というのが、ノートではなくカードに書いていく方法。
カードと言ってもトランプみたいな小さな紙片ではなく、B6サイズの中厚紙。
なぜB6という珍しいサイズを選ぶのかと言うと、持ち運びの利便性と、きちんとした文章で記録を残すのに十分なサイズだからだそうです。
書いた内容の整理・分類には、とじられたノートよりもバラバラのカードのほうが良いんだとか。
確かに、メモとかノートは全部同じノートに次から次へと書いていきなさいという本を読んで、半年ぐらいA4ノートに日記等書いていたんですが、閲覧性が悪くて、いつの間にか書かなくなってしまったし。

自分も”カード式”と言うものを実践してみようと思って、オキナのプロジェクト・ペーパーを買いました。

カードというにはペラいけど、レポート用紙の1.5倍ぐらいは厚いし。
一冊200円ぐらいなので、1枚あたり2円と中々お手頃。

どこまで続けられるか、三日坊主で終わらないか心配ですが、ここはがんばるしかない。
本書の序論は、こう締めくくられていました。

知的生産の技術について一番かんじんな点はなにかといえば、おそらくは、それについて、いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみることだろう。
たえざる自己変革と自己訓練が必要なのである。

情報収集なんかは積み重ねが大事で、ある程度オートマチック化していく必要があるかと思いますが、やはり常に問題意識を無くさない姿勢も必要なんだとおもいました。