同じ本を2回も読むんですか?

日々読書に励んでいるつもりだが、10月は再読の月としたいと思う。

最近再読して良かったのが、京極夏彦の「狂骨の夢」。

一冊一冊のブ厚さが常に話題の京極夏彦《百鬼夜行シリーズ》の3冊目。
先日、17年ぶりのシリーズ最新巻「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」が出て。
復習のため百鬼夜行シリーズを読み返してきたのだが、初読の時はピンとこなかった「狂骨の夢」が大変おもしろかった。

トリックがわからない状況で読むと、わけがわからなすぎて読んでいて気持ち悪い程なのだが、再読して巧妙に話をまとめて書かれているのがわかった。
すごい小説だったのだなぁ、と気付くことができた。

むずかしい本ほど再読しないといけないし、1回の読書で全てわかるような本ばかり読んでいてもだめなのかなと思う所もある。

再読は本の内容をより深く読みこめるのは言うまでもないとして、もう一つ効能がある。
単純に読むのが早くなるということ。

再読する価値があると思う本なら、自分の中では面白かったんだろうし。
面白い本は読むのが早い。

「この本、本当に読む価値があるのかなぁ〜?」
なんて疑っているとなかなか読み進まない。

先述した「鵼の碑」も、半分まで読むのに1週間かかったが、残り半分は3日で読めた。
やはり、おもしろくなってからが読書は加速する。

読書量を増やせるのは良い。

もっとも、本を読むのは冊数のためではなく、自分の頭の中につめこんだものが、どう働くかが全てである。
そう「すべてがFになる」で有名な森博嗣が、「読書の価値」で言っていた。(という覚えがある)

確認のため、「読書の価値」も読まないとだな。

フランクリン自伝

アメリカの実業家にして政治家、科学者であり、アメリカ独立宣言の起草にも関わったベンジャミン・フランクリンの自伝「フランクリン自伝」を読んだ。

この手の古典だと岩波文庫がスタンダードだと思うけど、自分は中央公論社の新書版で読んだ。
各章ごとに注釈が細かく載っているし、新書サイズで活字も現代風なので、古い版の岩波文庫よりは読みやすいと思う。

訳者の前文によると、フランクリンは「典型的なアメリカ人」と言われることがあるらしいんだけど、そりゃー嘘だ。
確かに、無一文から出発して大成功を収めたのはアメリカンドリームの典型だけど、フランクリン並の道徳を修めた人は稀でしょう。
実際自伝の後半によると、国政に進出したフランクリンの足を引っ張る不誠実な人の多いこと多いこと。
稀有な人物だからこそみんなの憧れに値する人物なんだな、と思う。

自分が履修した世界史の授業では合衆国前史は扱わなかったので、「本国イギリスの圧政に耐えかねた植民地議会が独立を宣言した」ぐらいしか知識が無かったんだけど、独立に至るまで、フランスと戦争したり植民地領主と対立したりと、知られざる歴史があったのがわかった。

本書のキモはフランクリンが青年期に作った「十三の徳目」。
自身の徳を完璧なレベルにしようとすべく考え抜かれた13の徳目。
一覧と解説はwikipedia参照
13の徳目を身につけるために、表を作って実施状況を記録するのも参考になる。
まさにライフハックの元祖と言えるんじゃないかと思う。
大いに参考にしたい。

ビブリオバトル


ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム (文春新書)

最近ネットやメディアでちょくちょく名前を聞くようになったビブリオバトル。
単なる本の紹介会だと聞いていたんですが、ちょっとだけルールを加えて、より効率良く、かつ飽きないように設計されているらしいです。
加えるルールというのが4点。公式サイトから引用させてもらうと、

【公式ルール】 

1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる. 

2. 順番に一人5分間で本を紹介する. 

3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2~3分行う. 

4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い,最多票を集めたものを『チャンプ本』とする.

だそうで。

5分間の発表で大事なのが「読んで自分はどう思ったか」を伝える事。
これは書評書く時に意識している所なんですが、同じ文章を読んでも人によって感じ方に違いがあるように、本を読むという行為が既に創作活動であるって事なんだそうです。

プロローグとエンディングにビブリオバトルの疑似体験として、出来損ないのラノベが書かれていてイライラするんですが、大事なのは実践。バトルだから実戦かもしれませんが、仲間を集めてやってみるというのが最初の目標なのでちょっと知り合いに声をかけてみようかと思います...(チラッ

科学的とはどういう意味か

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

「すべてがFになる」等のいわゆる理系ミステリで有名な森博嗣のエッセイ。

科学万能の時代である現代において科学を忌避し、「科学的な」話に耳を借そうとせずにひたすら単純化された情報を求める輩がいる。
こういった思考停止状態はどこからくるのか、そもそも「科学的」とはどういう概念なのかを説明する一冊。

科学に対する嫌悪というより”自分にはどうせわからない”というあきらめは、そもそもが思考停止から来ているので、自己の意識改革でなんとかするしかないんだけど、そういう態度がまかり通るのには、集団の空気を読んで周囲と同調したいという心理が働いている面があるという。
周りに合わせて自分の感情を殺していると、だんだんと自分で考える事をしなくなるというわけだ。
「科学的」ということを一言で言うと「みんなで築きあげていく」という事だそうだ。
みんなで公平に情報を吟味していくには、意味のブレの少ない数式を使う事になるのは当たり前。
世界の英知を集めて、皆が納得いく結論を得られるまで確定を避けるという意外と謙虚な業界だったみたいです。
昨年7月頃、「ヒッグス粒子発見か?」と言う報道がなされ、量子論の話題で盛り上がりましたが、結局発見された粒子がヒッグス粒子なのかはどうかは、今も情報を収集しているんだそうです。
実に慎重です。
最近では津波の高さ規定云々や放射線量の規制云々といった命に関わる”数字”の話が多く出ています。
数字の意味や定義を理解して、与えられた情報から最適解をはじき出すことの積み重ねが、大きな危険を回避する鍵になるんだそうです(実際命に関わるのか否かも含めて)。

超簡単 お金の運用術

超簡単 お金の運用術 (朝日新書)

世の中には色々な金融商品があって、儲かったり儲からなかったりしているらしいです。
本書はそういった群雄割拠というより跳梁跋扈とした金融界で、割と手間をかけずになるべく多く投資利回りを得られるやりかたを紹介しています。
ざっくり書くと、貯金をETFという投資信託の一種に投資して、事故とか病気とかで大金が必要になったら部分的に解約してお金を作って運用する方法。
もちろんもっと細かくHow-Toがありますが。
ETFとは「証券取引所で取引される投資信託」のことだそうで、あんまり儲からない代わりに割りと安定しているんだとか。
つまりローリスクローリターンなんでしょうか。
自分の乏しい経済知識ではETFの安全性が評価しきれなかったので手を出さないことにはしましたが、本書後半の「お金のあれこれ簡単レクチャー」は参考になりました。
「自分自身の財産を管理している銀行を相手に投資の話をしてはいけない」というのは良く考えると当たり前ですが、言われて初めて気がつきました。
自分の財布の中身を見せながら値段の交渉をするようなもんですよね。
それと、昨今の貯蓄が金利でほっとんど増えない時代に数%の手数料や金利を支払うのがいかにマズイ事なのか。
いかに借金をしてはいけないか という事もよくわかりました。
割の良い運用方法を知りたい、というより、この本をきっかけに実用的な経済のアレコレを学び始めるのに良いかもしれません。